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日本人は「偉い」か [身辺雑記]

なにぶんヘソ曲がりな性分なので、みんなが口を揃えていうことに対しては「そうなのかなあ?」と言いたくなる。最近でいうと、東日本大震災にあたって日本人は略奪騒ぎも起こさなかったし、お互いに助け合ったし、流石に日本人はできている、という一般ジョーシキがある。

もちろんアメリカニューオーリンズでの災害のときとか、外国だと何かあったあとアァやっぱり略奪おきたね、みたいなパターンがあるんだが、日本ではなかなかそういうことは起きない。もちろん、こういう事態になっても粛々と生きている被災地の人たちは凄いと思う。尊敬に値する。それはそれで確かにそうなんだが、ホントに「日本人が素晴らしい国民だから」そういうことになるんだろうか。

北大に山岸俊男という社会心理学の先生がいる。一般向けに面白い本もいろいろ書いている人なんで一読をお薦めしたいんだが、この先生、たとえば日本人だったら日本人にかかわる出来事を「日本人のこころ」のせいにするような議論を片っ端から否定してまわってる人である。絶対不変の「日本人のこころ」があるわけじゃなく、人間って自分が置かれた状況とかモロモロを計算した上で行動するんだよね、みたいな主張をしている。俺流にいうと「日本人論バスター」。

たとえば、人間は多勢に無勢みたいなところがあって、特に学校のいじめ問題なんかはそうである。だから確かある本で、「いじめは許さん」という生徒がクラスの●●人中○○人いたらいじめは最終的に終息するんだが、たまたま○○人に一人足りなかったら最終的に止められない、みたいな実験の話が書いてあった(うろ覚えなのでちょっと違うかもしれない)。とにかく、このクラスの生徒のこころは「キタナイ/美しい」みたいなレベルで判断するのは間違い、ってことだ。

さて、この人の考え方を援用していえば、今回の震災の関係で騒ぎが起きなかったのは、必ずしも日本人が高潔なこころをもってるからじゃない。醒めた言い方をすれば、日本人は仲間うちでは礼儀正しく仲良くするけれども、外側には冷淡である、みたいな閉じた社会を作りがちである。身も蓋もない言い方をするなら、ムラ社会の中でのサンクションが怖いから秩序を守るんであって、必ずしもその本性たるや善、というわけではないのである。

たしかに今回の被災地だって、これで旧来の秩序が全部消え去って新たな世界が始まる(「マッド・マックス」か。笑)とまでは誰も考えていなかっただろうから、心のなかで悪辣なこと考えてたヤツだってそうそうヘンなことはできなかったはずだ(避難地域でコソ泥しているような連中はけっこういたようだが)。日頃抑圧されてきた貧乏人が「どうせ失うものはねえんだ」とばかりに災害の混乱に乗じて悪事をはたらく、みたいな図式は描きにくい。

もっとも、良くも悪くも「昔ながらのコミュニティ」ってやつが比較的残っていたであろう今回の被災地だからこそ秩序が守られたのであって、いま首都圏でこんな災害が起きたら、まぁ略奪までするかどうかはしらんが、俺たちが「整然とした行動」をとれるのかどうかは、いささか心許ない。水道汚染の話がでたらいきなりミネラルウォーター求めてプチ・パニック起こしてた俺たちだから(笑)。

ちなみにここのところ売れているという吉村昭「三陸海岸大津波」には、たしか明治の津波の際、被災地を公然荒らしてまわる連中がいたという話があった。まぁ当時の日本には格差もけっこうあったろうから、ムラ社会を外れたアウトローたちが無茶をした、ということなのかもしれん。

ということで、「日本人は世界に冠たる素晴らしい民族だ」みたいな話になっていくのは、ちょっと違うと思うのだ。親鸞が言ったように、人間は時と場合によってはとてつもない悪を為してしまう存在なのであって、それを忘れちゃいけない。人間は天使にも悪魔にもなれる、というのはそういうことだ。確かに被災地には天使たちが舞い降りたのだろう。だが悲しいかな、人間はいつも、常に、「天使でありつづける」わけにはいかない。

とはいえ、まぁ美しき誤解をしたままのほうが幸せ、ということもあるだろう。俺たち偉いよね、すごいよね、そんな風にでも思わんと、原発まで爆発してしまったこの国で生きてくのは辛くてかなわん。それもまた事実だ。
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